en-gのスキーな毎日

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死刑制度に反対です

日本は嘗て死刑廃止国だったのです。

世界の2/3の国は死刑を廃止しているか事実上廃止しています。
アムネスティ・インターナショナルによれば、あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国95、通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国9、事実上の死刑廃止国35となっていて、法律上、事実上の死刑廃止国の合計は139ヶ国で、存置国はわずか58ヶ国となっています。日本はその数少ない存置国のひとつです。

日本における死刑は絞首刑です。
死刑はどのように執行されるのか、村野薫著『死刑はこうして執行される』(講談社文庫)から引用します。

刑壇上の中央には約1.2メートル四方の赤い線で囲った踏み板。その真ん中には立ち位置を決めるさらに小さい四角の目印。そしてその真上には太さ2センチ、首の掛かるあたり約1.2メートルを黒革で覆った長さ7.5メートルの麻縄の「絞縄」が、右手の壁際から滑車を通して垂れ下がっている。

死刑囚はこの踏み板の上に立たされ絞縄を首にに巻かれた後、執行官が踏み板をはずすための電動式のボタンを押すことによって刑が執行されるのです。なお、著書の中でこの死刑執行方法は「絞首」ではなく「縊首」であって、これは憲法31条に違反しているのではないかという意見も紹介されています。
最近の世論調査によれば日本国民の8割が死刑を肯定しているといわれています。死刑廃止を議論しようとするとき必ずこの「世論」が持ち出されます。死刑を廃止した世界の2/3の国はみな「世論」の形成を待って死刑を廃止したのでしょうか。
フランスは、直前のフィガロ紙の調査で62%が死刑に賛成、特に凶悪な犯罪に対しては73%が死刑制度を維持すべきという世論の中で、ミッテラン政権が1981年に死刑廃止の法律を通しました。フィリピンでは1999年の調査で80%が死刑制度に賛成でしたが2006年、アロヨ大統領は死刑廃止に踏み切りました。

世論の形成を待っていたなら死刑廃止は永久に出来ないでしょう。
死刑を肯定する人の主張は、1.犯罪の抑止 2.被害者感情。この2点が主なものと思われます。
死刑に犯罪抑止効果があるかどうかということについては、死刑肯定論者は「ある」と言い、廃止論者は「ない」と言います。しかし、死刑を廃止した国に凶悪犯罪が増えたという話は聞きません。
被害者感情。これは難しい問題です。最近では光市の母子殺人事件における被害者遺族本村さんの活動が心に残っています。

本村さんは「被告が深く反省し、更正の可能性もある」としても、それでもなお被告人を死刑に処することにこそ意味があるのだというようなことを述べていたと記憶しています。これはこれでひとつの見識でしょうが、私はこの考えに与することはできません。
被害者感情を死刑の理由にするということは、被害者の復讐を国が代行するということです。しかし復讐をしたからといって遺族が心の安寧を取り戻すとは思われません。けれども死刑制度を廃止しようとしたとき最後にクリアしなければならないのはまちがいなくこの被害者感情をどうするのかという問題です。ただ確実にいえることは、国家は個人の復讐を代行する機関ではないということです。これをふまえた上で被害者救済をどうするのかを考えるべきでしょう。
光市の事件の裁判に関してのマスコミの報道はひどいものでした。ワイドショーのキャスターやコメンテーターたちはそろって被告の元少年を「殺せ殺せ」の大合唱で、その弁護士にまで嵐のような非難が浴びせられました。このようなマスコミの姿勢が国民の死刑に対する考えに影響を与え世論を誘導していることは間違いありません。
しかしながら死刑存置国わずか58ヶ国という事実を私たちは厳粛に受け止めるべきです。そして死刑という刑罰をただ単に憎しみの発露として肯定するのではなく、国家が法の名の下で人を殺すことの是非を冷静に考えなければならないと思います。